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2022年秋に聴くべき国産hyperpopを紹介したい

こんにちは、皆さんhyperpop聴いてますか?

俺は聴いてます。

御託

hyperpopは、それが音楽ジャンルであるとか、音楽シーンであるとか言われていますが、俺はそのどちらでもないと思っていて、あえて言うならばhyperpopは一つの方法論のようなものだと思っています。2020年代のポップ音楽に共通する方法論。共時的に用いられだした音楽表現の方法。それがhyperpopです。ジャンルと呼ぶには繊細すぎるし、シーンと呼ぶには散漫すぎる。

それはちょうどJ-POPのそれに近い感覚かと。J-POPが示す範囲は明らかに曖昧です。スピッツ椎名林檎ファンキーモンキーベイビーズはみなJ-POPと言って良いけれど、それらは国内市場向けに制作されたポップ音楽というだけでJ-POPと呼ばれているのであり、ジャンル的な共通項を三者に見出すことは困難です。ただ面白いのは、(非常に言語化が難しいレベルで)それらはみなJ-POPという一定の方法論に基づいて制作されており、確かにJ-POP的であると言える点です。もしかしたら進行感を重視したコードとか、お決まりのように挿入されるギターソロとかがそう思わせるのかもしれません。...とにかく、俺たち日本人は無意識レベルでJ-POP的なものを受け入れる耳ができています。毎週Mステを見ていればそうなります。

話を戻せば、hyperpopもそれと同じことが言えると考えています。なぜなら、hyperpopは明らかに多岐に渡りすぎており、音楽ジャンル的な共通項が拡散しきっているからです。

ギャングスタ・ラップの流れをくむものから、ポストロック的なアプローチを試みるもの、同人音楽の色を濃く残すもの、ブレイクコアやナイトコアの直系と言えるもの......。それはなんだってよいのです。hyperなpopだといえる音楽はそれがhyperpopなのだから。そして、そんなノリのまま発達してきた音楽がhyperpopなのだから。

あえてここではその歴史的な経緯を追うことはしません。ユリイカのhyperpop特集を読めばだいたい分かります。てか日本語で書かれたほぼ唯一の文献となっております(2022年10月現在)

御託2

で、結局「hyperpopの方法論」って何?そんな言葉遊びみたいなこと言われたうえにユリイカ読めってそれは酷いんじゃないの。

わかりました。

もう少しだけ踏み込むならば、hyperpopには2点、必要条件として提示できる要素があると俺は考えています。かんたんな話です。

①hyperであること。つまり、既存の音楽よりも何らかの要素が超越していること、越境していること、過剰であること。それは、トラックの音圧でも、譜割りの複雑さでも、BPMの速さでも、オートチューンの過激さでも、まあなんでもいいのですが、それが過剰主義(マキシマミズム)的に表出したものであると。音圧の高いトラックも、オートチューンも、もはや当然のごとくポピュラー音楽に用いられる要素ではあるのですが、それがとにかくhyperに表出している。

②popであること。これは俺がhyperpopを語るうえで①以上に大事な点であるように思ってるんですが、popじゃないhyperpopはhyperpopじゃないのです。つまり、実験的な要素を盛り込みすぎていて、もはやpopさを失っているhyperpopはhyperpopではないわけです。変拍子が複雑すぎるとか、ノイジー過ぎてメロディが死んでいるとか、そんな要素の蓄積でハードコアすぎたり、アングラすぎる音になった音楽はhyperpopとは呼べません。そういう要素を盛り込んだ音楽を指す用語としてdigicoreなんて言葉が考えられたんじゃないかなとか思っております(ここ曖昧)。

なにはともあれ、ヌルいシティポップなんて聴いてる暇は完全にありません。マキシマミズムな電子の爆音は今しか咲かないのだから、皆さんhyperpopを聴くしかないのです。

本題

御託はさておき、ようやく本題です。以上を踏まえて俺が僭越にも2022年10月現在聴くべきhyperpopを紹介したいと思います。御託を書いていて疲れたのであとは足早にいきます。まあ聴けばわかる。

なるべく今夏以降にリリースされたものから日本国内のSpotifyでリリースされたもので、YouTubeでも聴けるものから選んでます。国内限定なのは国外シーンに俺が詳しくないからで、Spotify限定なのはサンクラを含めるとキリがなさすぎるからです。あと、これも俺の趣味でナードっぽいものが多いです、Tohjiとかめちゃめちゃかっこいいけどなんか怖い...怖くない?

hyperpopはナマモノ、連続体、運動体、まあなんでもいいのですが、とにかくその定義ごと蠢き続けているものですので、来月には鮮度を失っているかもしれませんが、悪しからず。

0 Stream (feat.hirihiri)/ somunia


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入門編です。入門編といったのは、hyperpopにしてはビートの音が小さいからで(サビはデカい)、hirihiri謹製のバキバキトラックは健在です。YACAニキのメロディセンスとsomunia氏の唄がPOPすぎるほどにPOPなせいで、トラックがバキバキなことに気付かないまである

1 10MICROPHONES AND DISTORTED WAVEFORMS!!/ hirihiri, libesh ramko


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hirihiriのバキバキビートをより堪能したいならこちら。ramkoさんとの共作の新譜です。俺はhyperpopって何?って聞かれたらhirihiriを聞けば分かるよ、って返します。#5のSUMMERTIMEとか来年にはクラシックになってていいくらいの名曲です

2 NLO/ vq


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hyperpopの重要な要素として「自己顕示」があると思っていて、それはhyperpopが元来性的マイノリティの自己表現として確立した側面があるからなんですが、性的マイノリティによる音楽シーンが悲しいことに活発でない日本では、hyperpopは10代くらいの若者の個人的で親密な自己表現の手段として用いられることが多いです。

vq氏の作品は俺たちTwitter世代より次の自己表現の(俺から見た)歪さが完璧に表現されています。インスタのストーリーやディスコ―ドが居場所の彼らは公開の場で自己を表明することを好みません。#2abcや#4noise ageはもはやクラシックと言っていい金字塔的な作品にも関わらず、削除と再upを繰り返されます。俺の世代にはないストーリー的な感覚。

vq氏をはじめとしたtrash angels周辺のミュージシャンはその志向がとても強い。サンクラが主戦場です。

3 assimilation/ asstoro


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俺がいま一番再生してるアルバムがこれです。というかここ一月くらいこのアルバムを再生しない日はないです。それくらいこのアルバムの完成度は高い、ここまでカッチリとまとめられたフルアルバムは国内のhyperpopでは少ないです。というかhyperpopはラフな音源が多いせいでむしろ特異でさえある。

音楽性はかなりhiphop寄りかつソリッドですね。この前ニートtokyo出てたときはギター弾き語りしてビビりました。


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4  sunameri smoke ft. Cwondo/ PAS TASTA


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シングルですが。国内hyperpopの旗手たちが集結したドリームチームにノーバシーズの近藤氏が加わった最高の編成(そういえば最近のノーバシーズもすごくhyperpopなんで聴いたほうがいいですよ)。hyperpopのはずがPOPすぎるあまり相対性理論とかそのあたりの音楽を聴いているときと同じ気分になってきます。古き良きインターネットの香りを感じてしまって本当に最高なのは、俺がインターネットボーイだったからでしょう。

5 Number 18s/ yung trash


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俺の神様はhyperpopさとまで言い切るyung trashの新曲。昔に共作でhyperpopwaveなんて曲も出してたように、hyperpopのミュージシャンって自分をhyperpopのミュージシャンと言いたがらない傾向が強いんですが、yung trashの場合かなり自覚的に活動しています。リリースを重ねるごとにエクストリームさを増していきつつもpopと呼べるギリギリのラインを常に更新し続けています。これが計算づくの感覚ならばそれはマジでやばい

6  skycave/ TEMPLIME+星宮とと


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tempimeってhyperpopだと思うんですけど、俺以外誰もtemplimeをhyperpopだと言っていないのでもしかしたら違うのかもしれません。星宮とともhyperpopだと思ってます。まあ聴けば分かる

以上