鼻紙diary

スーパーおもしろブログ

アクセスカウンター
簡易カウンターが付きました

銀杏BOYZ「ねえみんな大好きだよ」 感想


f:id:team-hanagami:20210720160058j:image

以前某所にあげてた文章を移行させてきました。

 

CDアルバムが価値を失って久しいが、それでも、少なくともロックとかいう過去の遺物の中では辛うじて意味を持ち続けているらしい。だから、俺はこのCDが出るのを本当に待っていたし、発売日前夜に繁華街に潜り込んでレコード屋に行くくらいには俺の価値観はまだ物質に依存してる。だってそうだろう、俺がこれを買った3時間後にはインターネット上にこの曲たちは放流されるのだから。でも、それでも俺がこの薄っぺらい円盤に意味を求め続けるのは、重ねていうようだが、この曲たちがロックだからだ。ビートルズだかプログレ勢だか知らないが遠い海の向こうでロックがアルバムに与えた意味の残り香を、俺はまだ探し続けている。
よりにもよって、そのロックが銀杏BOYZのロックならなおさらで、俺は銀杏BOYZのアルバムが出るのをかれこれ3年待ったことになる。3年前の10月の終わり、武道館っていう日本のバンドマン全員が等しく憧れるステージ上にようやっと立った峯田が「そろそろ、次のアルバム出します」なんて言ってからきっかり3年だ。ひとつ前のアルバムから数えれば、もう6年だ。
銀杏の前のアルバムは、震災を経た空気感の中でなければ完成しなかった「ぽあだむ」っていう超超名曲があったように、今度のアルバムも、いまの時代の空気感をうまく捉えた名曲があるといいなって勝手に期待していたんだけれど、そんな期待は軽々と超えてくれたというか、アルバム全体が前作を超えるヒリヒリしたバンドサウンドのノイズ感(前作は、どちらかと言えば電子音楽の冷たさと共存したノイズだった気がする)でパンクの暖かさをパッキングした特別な作品だった。
2020年にウキウキしながらアルバムを最後まで聴く機会なんて、ほんとに貴重だ。
「ぽあだむ」は、震災という巨大な現実に直面して「ヒーローなんかいない」けど、むしろその現実のなかで「寂しいから手を繋ぐ」っていうミニマルな生活感の中での幸せを歌ったわけだが、2020年はもはやそういった繋がりすら許されないような時代だから、だからこそ、#4「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」とか、#10「GOD SAVE THE わーるど」みたいな、人間の精神を飛び越えたでっかい概念と向きあえたんじゃないかな。ポストトゥルースの世界でコーラ口移ししたって神様が守ってくれるって詞、2020年じゃなきゃ書けないよ。
一時期ライブでさえ殆ど歌われなかった、人間の恥と真っ向から向き合った大曲、#9「生きたい」を再びアルバムに入れたことも、そういうことなんじゃないかって、勝手に思った。
そんなところです。