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正しさばかりのこんな世の中じゃ「仮面ライダー平成ジェネレーションズFINALビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー」

俺は誰だ?レイザなのか?

 

間髪入れず、という言葉がこれ程似合う男もなかなかいない。ついさっき映画の感想をあげたと思うが早いか、悪びれもせず別の映画の感想をあげる。しかも公開中の、更によりにもよって、いかがわしいランキングで一位をとりお茶の間を沸かせ風の噂の種となっている映画を、である。当初はボルメテウス武者ドラゴンの記事を書いていたことを考えれば、これは驚天動地天変地異天地無用というほかない。

 

ヒーロー映画と言うともはやアメコミの庭である。商売っ気を抜いたが故にシンプルでヒロイックなヒーローたち。スーパーな男、ワンダーな女、クモ男にコウモリ男、ブラック未亡人。大して日本のヒーローはどうだろうか?ウルトラマンアカレンジャーは良いとして、仮面ライダー仮面ライダー?一番シンプルであるべき初代たちーーひいては「冠詞」とさえなり得る名前の時点で既に拭いきれない違和感が全方位一斉射〈ハイマット・フルバースト〉なのだ。

 

雑多さはこの記事の冒頭から顔をのぞかせている。現在公開中のアメコミ映画こそDCの「ジャスティス・リーグ」。そこへ「世界よ、これが日本のヒーローだ」と名乗りをあげるのが「仮面ライダー平成ジェネレーションズFINALビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー」だと宣うのである。ジャポニカどもが笑わせる。

 

とにかく仮面ライダーは「仮面」というにも「ライダー」というにも中途半端なのだ。実際は「仮面」「ライダー」「ビルド」の「ラビット」「タンク」フォームだったり、「マキシマム」「マイティX」「ガシャット」と「ハイパー」「ムテキ」「ガシャット」をドッキングさせ「仮面」「ライダー」「エグゼイド」「ムテキ」「ゲーマー」になるのだからもうやっていられない。

 

この「前の単語と関係ない単語を言うゲーム」(面白い)の果てに生まれた闇鍋をパイのように頭部へぶつけられる感触。

 

率直に言おう。気持ち悪い、気持ち悪いほどに気持ちが良い。「これ」なのだ。

 

そもそもなぜこのような不可思議現象が起きるのか?答え(であって答えではないもの)は玩具が出せるから、である。スポンサーのバンダイへ利益を与え、見返りに予算をいただく。もはや癒着などという言葉では言い表せない二者の関係もエスカレート&エスカレーションを続けている。

 

しかし子ども向け番組のスポンサー、玩具というものは避けては通れず、現在放送している「ウルトラマンジード」「仮面ライダービルド」「宇宙戦隊キュウレンジャー」ではそれぞれ「ウルトラカプセル」「フルボトル」「キュータマ」というコレクションアイテムを「ジードライザー」「ビルドドライバー」「セイザブラスター」で読み込むという遊び方を提供している。一つ大きなアイテムを売り、それのプレイバリューをコレクションアイテムの波状攻撃によって拡大していく。

 

出番という点ではコレクションアイテムの価値は決して並列ではないし、どうしても満足度は逓減していくだろう。工夫がなされているとはいえ、後半は面白いおもちゃを買うというよりコレクションに重きが置かれていく。しかしそこに触れると「そもそもおもちゃを買う意味とは?」という第一命題コギトエルゴスムが炸裂するのでこれ以上はお前は誰だ?俺の中の俺

 

Come a world queue die.

 

近年の仮面ライダーの方法論として、モチーフを定めるということをやっていた。戦隊ものが兼ねてから行なっていたメソッドである。しかしさらに時間軸を現在へ近づけていくと、徐々にモチーフの複数化に気付くだろう。玩具の主軸となるモチーフと話の主軸となるモチーフ。

 

「エグゼイド」において、「ゲーム」と「医療」の二つを、「命」を使って見事に描ききった。そしてなんと「ビルド」はある種メタ的に、異なる二つを混ぜて創造するという現象そのものをモチーフにし始めるのである。

 

科学実験はともかく、今回のフルボトルの中身は笑いが涸れるほど無節操だ。ゴリラ、忍者、友情、が有機物。掃除機、ダイヤ、コミック、消防車が無機物。しかし平成二期ライダーも、探偵、魔法使い、戦国武将、幽霊かと思えば、メダル、スイッチ、ミニカーなどやはり無節操なのであった。

 

ここで、言っておきたいのは、平成二期(ダブル〜ビルド)仮面ライダーのベルトは基本的に「ドライバー」であり、アイテムを使わないベルトは「バックル」なのである。この認識をしっかり持っておくことが仮面ライダーたらしめる要素の理解への足がかりとなる。ドライバーとは「駆動装置」であり、アイテムから力を引き出すためのもの。初めてのドライバー、ファイズドライバーが変身ベルトの道具化を提示した。誰でも変身できることが強調された同作の人気とは無関係ではないだろう。

 

ディケイドがカードという形で仮面ライダーを抽象化し、ドライバーを再提示した。そして平成二期の始まり、「ダブル」はガイアメモリ というアイテムの導入によりその「可視化」の実現に繋がる。これが「ダブル」の偉大なところで、仮面ライダーたちが「仮面ライダー」の精神を、平成ライダーたちが「クウガ」の信念を受け継いでいるとして、確かに平成二期ライダーは「ダブル」の方法論を継いでいる。

 

敵も味方もガイアメモリというアイテムで変身する。もっともわかりやすい例がこれで、基本的に「力」は技術や精神ではなく、アイテムに属する。罪の十字架〈クロス・ファイア〉というのはおふざけではなくて仮面ライダーの初期名前案の一つで、常に敵と同じ力を以て戦うことが仮面ライダーの根源である。

 

今映画のラストで「仮面ライダーとカイザーの違い」が提示されたのも至極当然で、万丈の「仮面ライダーとは?」という問いへのアンサーの一部なのだ。玩具の量産化を逆手にとるようにして、仮面ライダーはよりその本質へ近づいていく。

 

それに力がアイテムに属するということは、逆に精神は依存しない。実のところ、変身できるとかできないとかは彼らにとっては関係ない。目の前の人を放っておけず、それを救うために伸ばす手が変身というプロセスになるだけ。悲しい過去を背負い、自分そのものとして変身を行う昭和の仮面ライダーとは全く異なる変身といえよう。異形の姿を宿す彼らはその変身から逃れることはできない。どこまでいっても彼らは仮面ライダーを背負う、その悲しみを仮面に隠して戦い続ける。一方でアイテムで変身する場合それが無ければ変身はできない。逆説的に、身一つになっても食らいつく精神性をこそ仮面ライダーと呼べるようになる。仮面ライダーは力の呼び名ではなく、力の使い方の呼び名なのである。

 

常日頃から提唱しているのだが、戦うのは「悪」と「正義の味方」である。「悪」はわかりやすい。弱者を自己のために振り回すことは悪と呼ばれる。しかし「正義」は難しい。なぜならば、見返りを求めてはいけないのが正義で、そんなことを実行できる人などいないからである。しかし現実には正義ではなく、正義の味方がいる。

 

映画のもう一つのキモとして、「何で見知らぬ人のために戦えるんだ?」という問いへのアンサーがここに顕在する。ライダーたちは各々闘う理由がある。伸ばされた手を掴むため、ダチを作るため、弱者を見捨てないため、未来へ繋ぐため、笑顔を守るため、ラブアンドピースのため。そこには理想がある。自分の信じる理想を正義と呼ぶ。その正義へ味方する生き様が、即ち正義の味方と呼ぶべきもの。

 

自分の正義のために戦うことが性悪説的に描かれるのがライダーバトルであり、性善説的に描かれるのがライダーの共闘という現象である。今回の映画であれば徹底的な性善説を感じることができるはずだ。誰に感謝されるわけでなくても、自分の正義には抗えないので、戦う。映画ならではの世界の破滅を目の前にしているせいでぼかされてはいるが、彼らは正義という仮面を被ったただの正義の味方であり、それは偽善者とも呼べるのだ。

 

力と意志、そして正義。玩具の過剰さと螺旋を描いて突き進む仮面ライダーなりの正義の在り方を強い軸にして創られたこの映画にしてようやく、ライダー映画はヒーロー映画として一つのステップを越えた。

 

アメコミの実写化にあって日本の漫画の実写化にあって然るべきものはただ一つ、愛である。予算や役者のNGなど、「原作」から二次的に創られるものは何らかの制約を受ける。その制約は映画の出来に関わってはくる。確かに、今回のレジェンドキャストたちも、スケジュールによってはこの映画のエンタメ性をより深く出来ただろう。予算が山のようにあれば圧倒的なVFXがファンの心を掴み、興行収入はうなぎのぼりかもしれない。

 

しかしこの作品には、そういったファン向けの部位以外にも、今まで10年弱描いてきた「平成二期ライダー」への猛烈なリスペクトがある。もちろんファン向けの描写を語ることも可能なのだが、ここまで語ってきたことはこの映画がここに存在する、その事実への感謝である。

 

そしてここから先、複雑怪奇な「仮面」「ライダー」はこれからも正義の仮面を被り続けながら、様々なモチーフ世界へライドしていくだろう。「どの世界にも仮面ライダーがいる」という勝利の法則。仮面ライダービルドは、全く関係ないものを組み合わせる、つまり仮面ライダーのメソッドを実践し続けている。メソッドがモチーフとまでなったのはスクラップ&ビルドの準備段階に過ぎない。「破壊者」ディケイド→ダブルの2010年から創り上げてきたものが、創造者ビルドによって破壊されまた創造されていく。日本のヒーローの一つの世代の終わり〈ジェネレーションズFINAL〉。何見の価値もあるはずだ。