別に知らなくてもいいけど、言われてみれば『確かにそうじゃん!』と驚く知見
つい先日、夜行バスで東京から自宅のある大阪へと移動する機会があり、バスの発車前に少し時間があったので近場の有名な銭湯であるサウナ錦糸町へ行くことにした。
俺はミーハーさここに極まれりといった調子で、今現在体よくサウナにハマっており、旅行先などでも各地の有名なサウナに訪れては汗を流しまくっている。
錦糸町駅から歩いて5分ほどのサウナ錦糸町は今流行りの最先端の設備と清潔感があるサウナというよりも古き良き銭湯施設といった風情で、なんと言っても120℃という都内最高温度を標榜するサウナと全長7メートルの天然の湧水を利用した水風呂が特長だ。
120℃のはずのサウナ内の温度計はなぜか148℃を指しており、正直なところ俺は5分が限界であったが、その後の水風呂は完全に最高だったということは確かである。水風呂に潜ることは本来ならばマナー違反であるがサウナ錦糸町では無礼講、誰もが流れるプールばりに循環の早い水風呂に肩までとは言わず頭頂部まで沈めて体内の熱気を鎮めていた。
平日の深夜であったがサウナはほぼ満室状態、流行に敏感そうなサブカルっぽい見た目の若者のみならず(俺もその一人だ......)、トレーニングジムも併設されていることもあってかやたらとガタイのいい真っ黒に日焼けした武闘派や、どこのサウナにも必ずいる常連のサウナ爺、そして一際目を引いたのが全身を美しい和彫りで彩ったその道の方だ。
その道の方はサウナに何人も出入りしていたが、その中でも異様なまでの存在感を誇っていたのは、錦糸町という夜の街を我が物顔で闊歩することを許された若い衆、日本でも指折りの極道といった風情の若若さとふてぶてしさ、そして引き締まった肉体を維持する向上心を併せ持ったエリートヤクザだ。知らねえけど。
ちょうど龍が如く0の若い頃の桐生一馬みてえな凄みがあったけど、目が合うのが怖すぎたのでよく見ていません。
ただ否が応でも意識せざるを得ないその存在は、一瞬だけサウナに入ったかと思えば、その後俺が地獄のような温度のサウナと水風呂を行き来する間、ずっと洗い場で全身の毛を剃っていた。
めちゃくちゃ丁寧に。
時間にして20分ほど。
そこで俺は思った。
言われてみれば確かにそうだけど、刺青入れてる奴って、その部分の毛って剃ってるんだなぁ。そうしないと見栄え悪いしなぁ。確かに入れ墨に毛が生えてるのって想像できないなぁ。
全身に入れてると、めちゃくちゃ大変そうだなぁ。
桐生一馬も剃ってたのかなぁ。
銭湯にヤクザがいて、しかもそれが毎晩毛を剃るような意識高いヤクザじゃないと気づけない事実だなぁ。
どうでもいい?でも知らなかったでしょ。
みんなにも話そっと。
そう思いながらサウナを後にし、東京駅から夜行バスに乗り込んだ。
サウナの効果か知らないが、梅田につくまで一度も目覚めることのない深睡眠だった。
以上、「別に知らなくてもいいけど、言われてみれば『確かにそうじゃん!』と驚く知見」こと、「ヤクザは全身の毛を剃っている」でした。
おわり