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オタク、アニメの舞台を歩き、泣く

このブログでも再三書いておりますが、自分、今年に入ってからアニメ(及びその漫画原作)の『ゆるゆり』にガチでハマってしまいまして、今回、北陸を旅行した帰路にその舞台として設定されている富山県高岡市を訪れました。

ここ数ヵ月の俺の『ゆるゆり』へのハマりようはまさに限界で、自粛やらで家にいたこともあってずっと『ゆるゆり』のことを考えていた。アニメや原作のコミックは何回も何回もじっくり観返して、声優さんたちのラジオやライブDVDも少しずつ聴いている。『ゆるゆり』を他のいわゆる日常ものの作品と比べたとき、明らかに際立っているのは、複雑に絡み合って有機的に変容し続けるキャラクター同士の関係性で、それはやはり、他の多くの日常ものと呼ばれる作品群が『あずまんが大王』に端を発する「空気系」などと呼ばれるジャンルの流れに位置するのに対して、『ゆるゆり』は原作コミックの掲載雑誌が「コミック百合姫」という女性同士のよりミニマルな関係性に主眼を置いた作品を扱う漫画雑誌であることもあって、やはり出自からして他の日常ものの作品とは区別して考える必要があるものなのかもしれない。例えば、主人公たちごらく部四人と、その"ライバル"生徒会四人を大きな二項対立として抽出して考えただけでも、その四人同士の関係性は対称性と非対称性の反復によって重積していった、決して紋切り型には捉えられない複雑なものになっている。面白いのが、キャスティングの妙によってごらく部の四人と生徒会の四人の声優さんの関係性も見事に(アニメでのそれとはまたことなった形で)鮮やかに浮き立っていることで、(当時)新人声優だったごらく部と、実績ある中堅声優だった生徒会という関係性は、『ゆるゆり』の商業的成功というドラマをより感動的なものにすることは言うまでもない。それに、個々のメンバーのより小さな関係性がより複雑に発生するので、………………………………

この話は"本当に"キリがないので、やめときます。

さて、ゆるゆりの舞台が明確に高岡市であることが示されているのはアニメ一期・二期を経て2014年に公開されたOVAゆるゆり  なちゅやちゅみ!』で制作が動画工房からTYOアニメーションズに変わってからなので、舞台として参照されるのも必然的にOVAシリーズ以降になる(動画工房時代の作画でも、舞台が富山にあることは示唆されてはいたが。一期5話の夜行バスのシーン参照)。 

といっても、『ゆるゆり』シリーズでは、その舞台がいわゆる「聖地巡礼」ビジネスのように、アニメより発せられる一連のコンテンツが地域経済の活性化のようなものと結びつけられることもなく、あくまで「作画上のロケ地として高岡市が選ばれた」だけで、コラボグッズが売られていたり、町中にポスターが貼ってあったりするわけではない。もちろん、何の根拠もなく高岡市が舞台になった訳ではなく、原作者のなもり先生の出身地が富山県であるということもあるにはあるが。また、TYOアニメーションズは背景美術に定評のある制作会社で、非常に再現性の高い背景と美麗なキャラクター作画の両立によってOVAシリーズ以降の『ゆるゆり』はいわゆる日常ものの作品の中でも頭ひとつ飛び抜けたアニメ作品として生まれ変わったといえるだろう。

というわけで、高岡市に降り立つ。高岡市前田利長の居城に始まる高岡城の城下町として発展してきた歴史ある都市で、富山県第二の都市として栄えてきたそうです…………が。人がいない。平日昼間というのもあるが、駅前の商店街は閑散としている。気を取り直して、観光案内所でママチャリをレンタルし、市内の『ゆるゆり』舞台となった地点を辿って爆走していきます。以下、写真コーナー。

↓ちょっちまっち?!ここ、『ゆるゆり なちゅやちゅみ!』冒頭であかりが昇ってきたエスカレーターじゃない?!高岡駅北陸新幹線の誘致に合わせてめちゃくちゃ現代的な駅舎に改装されたらしい。新幹線止まるのは新高岡の方なのに……ちなみに、人がいない瞬間を見計らって写真を撮ったのではなく、常にこんな感じだった。

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↓あかりとちなつがランチしたレストランのすぐ裏に、その直後に訪れていた神社が本当にあるんですよ?!これってすごく素敵★フェスティバルじゃないですか?!テレビシリーズ三期『ゆるゆり さんハイ!』は本当にこういう細かい舞台設定が多くて、彼女たちがこのまちで生活しているんだ、という実感がすごいある。

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↓櫻子が猫を追いかけてたら迷子になって向日葵に助けを求めたときの電話ボックス。電話ボックスはもう撤去されていて、この場所を特定するまで自転車で20分くらいグルグル回っていた。彼女たちの生活圏は緻密に設定されていて、この電話ボックスはその生活圏から巧みにはみ出た場所にある。
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↓OP映像で綾乃と千歳が歩いていた川沿いの遊歩道。京子と綾乃が映画をみた帰り道で別れた交差点もこのすぐ近くで、綾乃の住む家もこのすぐ近くの設定であることもわかる。この近くは新興住宅街といった風情で、小綺麗な一軒家が立ち並んでいる。綾乃の健やかな暮らしぶりも自然と想起されるというものだ。彼女の将来、心配有馬温泉……心配、ノンノンノートルダム……

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↓部活動の帰り道、一年生組と二年生組に別れる橋。この日は夏も夏の8月下旬だったが、曇天だったこともあって、自然と雪に閉ざされた厳冬の季節の情景も思い浮かべることができた。京子の結衣に対する複雑な感情の一端を覗かせる名シーンもこの橋上で演じられたと思うと、感慨深い。一期の当時は新人もいいところの声優だったごらく部の四人が、ここまで情緒に富んだ微妙な感情の機微を見事に演じられるようになったことは、今さら追いかけている身としても、素直に感動する。

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↓テレビシリーズ最終話や、OP映像で彼女たちが少し足を伸ばしてお花見にいった場所は、彼女たちが暮らす地域とは駅を挟んで反対側の高岡城跡公園で、春には桜の名所として多くの花見客が訪れる。短い距離だが、帰りは駅まで路面電車を使ったのかもしれない。
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以上、写真コーナー。細かい舞台の設定は先行のファンの方たちの取材が非常に素晴らしいものなので、ここでの記載は省略します。本当に細かい取材に助けられました。

このまちで、赤座あかりたちが生きていて、彼女たちの住む家があって、毎日の中学生活を送っていて、様々な人間関係を送っていて、そういうことを想起するだけで、本当に胸がいっぱいになって、涙ぐんでしまうのだ。俺は、オタクだから。どうしようもないオタクだから。

この街を自転車で滑走しているとき、何度か本当に泣きそうになった。というか、ちょっと泣いた。見覚えのある交差点を目の当たりにしたり、何度もアニメで目にした川沿いの道を発見したりして。このまちで俺の大好きな作品が産まれたということが、あまりにいとおしすぎて。みんなの通学路は本当に一本の道になっていて、ごらく部が帰り道で別れる橋は本当にあって、あかりとちなつがデートした地域や、京子と綾乃が映画をみたイオンモールや、櫻子が迷子になった電話ボックスはは本当に彼女たちの生活圏から少し離れた場所で、そういった細やかな描写のひとつひとつが、『ゆるゆり』をもっと好きにさせてくれる。みんなの住む街のすぐ近くにある大きなお寺や、歴史情緒ある通りや、アスファルトに埋め込まれた消雪パイプや、少し寂れた駅前のアーケードでさえも、例えそれが本編で描写されていなかったとしても、それは俺にとっては彼女たちの生活の息づかいを感じさせる大切な要素になる。

ゆるゆり』のみんなが吸っていた空気を吸って、同じ風を肌で感じるだけで、俺はこの作品をもっと好きなれたし、これからも好きでいようと心から思える。

それが、オタクが好きな作品の舞台を歩く理由、だと思う。

ほんと、2020年、『ゆるゆり』に会えてよかったわ。ほんと(感涙)。