鼻紙diary

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ヒトリエのツアーファイナルに行ってきた

ヒトリエは誰を救うか。

どうしようもなく2つに裂けた心内環境を制御するだけのキャパシティなどが存在しているはずもない、バーチャルとリアル、オンラインとオフライン、POPとサブカルの狭間で苦しみもがく、俺を含めた情けない人間(もちろんそれは、ヒトリエのメンバー自身でもある)のために、彼らは必死に音楽を鳴らすのだと、今日のライブで確信した。 

 

『絶対なんて言葉はもうあたしに関係がない。ひとつってあたしを唄う言葉ってない、それでもあたしは唄うわ。』幕が開いて、真っ先に彼らはそう告げた。なんて力強い宣言。揺れ動くアイデンティティ、片方を選べば遠ざかってゆくもう片方、一方通行の生活。個人が抱えるには重大すぎる葛藤の数々を代弁しようとする、宣言。ロックンローラーが代弁者であるべきなら、ヒトリエは紛れもないロックスターに違いない。

『僕がなりたかったのは、愛だ。』余りにも普遍的で、泡沫の夢のような主題に、果敢にも挑戦したのが『ai/SOlate』であり、『UNKNOWN-TOUR 2018 “Loveless”』であった。愛が唄われるとき、それはいつも切り取られ、切り刻まれ、その断片を、残骸を享受するしかない。しかし彼らは、不完全で、絶対的からは遠いけれど、「愛」その輪郭を掴んだのだろう。今までよりも力強いビート、さまざまな音楽性を貪欲に取り入れる姿勢はその象徴だ。

彼らの唄は、いつだって架空の少女をかたどって、聴く者を誘って止まない。でも、もはやその少女は、だれか1人の象徴ではない。ハッピーかアンハッピーか、web上かライブ会場か、vocaloidかロックバンドか、その垣根など、wowakaは、ヒトリエは、軽々と飛び越えてしまう。架空と現実を隔てる壁に巨大な風穴を開けた『アンノウン・マザーグース』、全身全霊の絶叫がフロアーを埋め尽くした瞬間。少女の幻影は無限に膨張し、ありとあらゆるものを鮮烈に染め上げた。それは、宇宙の始まりに最も似た情景だったに違いない。「俺たちは音楽を超越した、宇宙に、君と行きたい、行けるかな」彼らは問いかける。行ける、飛べる。産声を上げ始めた夢は、もう止まらない。

『IKI』は、彼らのモノクロだった、モノカラーだった世界を、花束のような可憐な色たちで彩った。そして、『ai/SOlate』が色彩で充満した世界から、普遍的な「愛」を見いだした。愛、そこにある可能性は、終わりなく広がり続けるだろう。

どこまでもついていこう、宇宙の果てまでも。強く誓った。